現代では複数スタッフによるチーム医療が常識?

一昔前は、大きな病院でも担当医制でした。1人の医師が数人の患者さんを担当し、担当医が1人で悩んで考えて、患者さんの治療に当たっていました。しかし今は、チーム制の病院が増えています。開業医でも1人開業は減って、複数の医師で患者さんを診察するところが増えてきました。

患者さんにはいろいろな人がいるように、医者もまたいろいろな人がいます。患者さんに感情移入しやすい医者もいれば、患者さんに感情移入することなく淡々と診察する医者もいます。患者さんに近づきすぎてもダメですが、いつも遠くから見ているのもダメです。時には近くから時には遠くから離れてみることが大切です。枝だけを見てもダメだし、森ばかり見てもダメだというのと同様です。だから、複数の医師でチームを組んで患者さんを診察して、医師同士が互いに報告、連絡、相談するホウレンソウ(報・連・相)を密に行うことや、チーム全体でカンファレンスを行うことが重要です。

医者の中には、慎重派の医者もいれば大胆に挑んでいくタイプの医者もいます。どちらも一長一短があります。大胆な医者は、一人診療だと暴走しがちです。慎重派の医者がブレーキ役となるでしょう。慎重派の医者が、副作用を恐れるあまり次の治療戦略の導入をためらっていれば、大胆派の医者が背中を押すと言うように、互いにカバーし合ってチームの力が充実します。

3人そろえば文殊の知恵という諺があるように、一人では解決できないことでも、カンファレンスで解決法が見つかることも多々あります。また、ベテランの医師の経験に基づいた判断も大切ですが、若い医師の斬新的な考え方が突破口になるケースも多々あります。

少し前に、無痛分娩での事故というニュースもありましたが、これも1人の医師が分娩を行ったことが大きく問題となりました。チームを組んで複数の医師で分娩を行っていれば、事故は防げたのではないかと考えられています。緊急事態が発生した時は、たとえ研修医であっても頭数がある方が有利です。

ラインを取る医師、連絡する医師、超音波でお腹の中の状態を見る医師、処置を行う医師と、複数の医師がいればこれらのことを一度に行えます。1人しか医師がいない時は千手観音ではないのだから、1つずつしかこれらのことができません。

これからの医療は、一人開業は減ってチームで診察や治療を行っていくことになるでしょう。